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2014
05.15

21回目 火落ち菌

Category: 日本酒
fune.jpg
うちの蔵の酒槽(ふね)の様子



一般の人はあまり気にしてないことに、醸造酒は雑菌におかされやすいということがあるねん。

蒸留酒なんかは、アルコール度数が高いから雑菌は繁殖せんけど、特に日本酒は気つけなあかんねん。

自分で製造から瓶詰め出荷管理までしてたときは、雑菌管理が一番の仕事やったし、気つこたわ。

タンク洗いから、道具洗い、ビン洗いまで、造り酒屋の仕事のほとんどは洗い仕事やね。

せやけど、なんぼ気をつけても雑菌は入り込むねんな。

このお酒の好きな菌を、乳酸菌の一種で「火落ち菌」と呼んでる。

この菌が増殖すると、お酒が濁ったり、酸が増えたりするねん。これを「火落ち」言うてる。体に悪いかどうかはようわからんねけど。

増殖を抑えるには、低温に保つか、死滅させるか、完全に取り除くしかあらへん。まあ、高度数のアルコール中では生きられへんけど、日本酒の市販酒の一般的なアルコール度数15度程度では平気やねん。

そこで、死滅させるには、「火入れ」っていう作業をするわけやね。

低温殺菌法(パスツリゼーション)っていうやつやね。18世紀に、フランスの細菌学者パスツールがぶどう酒の腐敗を防ぐために考案した方法やけど、日本では15世紀に奈良ではすでに行われてたと記録されてる。

もう一つは、取り除くという方法やけど、濾過やね。

これは、限外濾過って言われる方法やけど、相当な設備がいる。

ここで難儀なんは、「火入れ」にしても「限外濾過」にしても品質確保のためにやるんやけど、それが逆に、風味を落としてしまうことになる、ということやねん。

生酒を売ろうとしたら、本当は「純生酒」で出荷したいところ、技術と妥協のせめぎ合いをするわけやね。

大手メーカーは限りなくリスクをゼロにするから、風味を犠牲にせざるを得んとこがある。

そこが、生酒を売りにしてる地酒の入り込む隙間になってることもある。地酒は特約店制をとってて、目の届く範囲にしか出荷せんからね。もちろん地酒メーカーも細心の注意を払ってる。

無濾過生で出荷してる酒は原酒が多いのは、アルコール度数を上げて、火落ちを防ごうとしてる側面もある。

ただ、お酒を仕事とする人の中でも、火落ちに対して無頓着な場合が多いねんな。

まして消費者の中には、普通お酒は傷まへんもんと考えてるわなあ。

これが、製造側からすれば悩みの種やねん。

酒販店等でタンクから量り売りをされる場合なんか、見てて胃痛なるわ。火落ち菌は一般家庭にはあんまりおらんけど、酒を扱うとこにはおると思うし。

もうほんま、ちゃんとお客さんにリスク説明してんのかなあ。事故起こらへんのたまたまちゃうの。

日本酒って繊細なもんやねん。

醸造する側のエゴかもしれんけど、日本酒は傷むもんやという意識をもっと持ってもらいたいねん。

ただ、この面倒なところが、焼酎とかの蒸留酒の後塵を拝することにつながっているかもしれん。

でも逆に、そういうところが、日本酒の魅力でもあることを、わかってもろたらうれしいなあ。


それから、一般に「新酒しぼりたて生原酒」として出荷されるお酒は、寒い冬の間に飲みきってしまうのが美味しいねんけど、うちで扱わせてもらってる「風の森」って言うお酒は、微生物管理が行き届いた「油長酒造」から年中出荷される「無濾過生原酒」やね。

確かに封を切らんかったら雑菌に冒されることは絶対ないけど、やっぱり生酒やという認識は忘れたらあかん。

販売させてもらってる者として蔵の品質管理に頼ってるばかりではあかんよね。

むやみに、何年も生のまま古酒にしたり、かってに小瓶に詰め替えたり、どうなんかなあ。

「美味しかったらええやん」っていうことやけど、お酒の変化の微妙なところは、やっぱり「きき酒」でしかわからんし、自分も鍛え直さんとえらそうに言えんわ。




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